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短期連載(打ち切り)となった作品について注目、分析する記事です。今回は週刊少年ジャンプ2023年49号にて最終回を迎えた一ノ瀬家の大罪について書かせていただきます。あらすじや設定につきましてはこちらをご覧ください。
それでは短命に終わったことから、打ち切りの理由になったと思われる問題点について考えて行きます。
1 夢と現実の境目が分かりにくくストーリーを把握出来なかった
正直、これが本作の一番の問題だった気がします。重要なのかと思った設定や描写が「夢だった」という結果になることも多く、はっきり言って裏切られた気分になってしまう構成だったんですよね。また、特に中盤からはどれが夢でどれが現実なのか区別も出来なくなってしまい、見ているだけで疲れるような作品になっていたように感じます。
いわゆる「夢オチ」の扱いが難しいというのは分かりますが、上手く物語に組み込む、どこが夢なのかはっきりと読者に示すなどの工夫をすれば盛り上がるはずなんですよね。本作は現実との境目が曖昧で考察や予想などもほぼ不可能になってしまったことが致命的だった気がします。
また、そもそも夢の要素というのは読者に求められていなかったのではと思います。第一話の時点で示されていた家族がバラバラになった理由、事故の経緯などの詳細を描いて欲しかったんですよね。
途中からこういった部分よりも夢の要素が強くなってしまい、正直期待外れだと感じました。はっきり言って、ミステリーやサスペンスを扱う作品と夢オチの相性は基本的に良くないのだと思います。
実は夢だった、という展開が多すぎて真剣に読んだり考察したりする気が失せてしまった、というのが正直なところです。夢をメインストーリーに組み込むという構成が悪いわけではなく、ワンパターンになってしまったことが大きな問題だったと感じます。扱いが難しい設定を描く際はしっかり工夫して欲しかったです。
2 不自然な設定やシーンが多く違和感が残った
上述の夢の要素についてもそうなのですが、それ以外にも納得出来ない部分が多かったと感じます。漫画ですし多少の誇張程度なら個人的には気にならないのですが、無視出来ないレベルでおかしな描写が多かったんですよね。
顕著だったのは福井編だと思います。はっきり言って颯太、けんた、文乃の疑似家族については終始引っかかってしまいました。
特にけんたの設定はかなり重いのに全く説得力がなく、読んでいてストレスがたまってしまうレベルだったんですよね。また、けんたが福井にいた理由についても結局判明しなかったので残念に感じました。
細かい部分になりますが、そもそも福井については「新幹線で行く」という展開自体がおかしいんですよね。このシーンが描かれた時点では新幹線は開通していなかったため、正直冒頭の時点で気になってしまいました。
また、以前にも書きましたが、伏線らしき描写に触れないまま物語が終わってしまったことも大きな問題だったと考えております。中でも翼に手紙を渡した人物については絶対明らかにしなくてはいけなかったと思います。
他には、ほぼ寝たきり状態の耕三を車の後部座席に乗せる、何度も描かれていた颯太のカメラが壊れるシーンについても経緯が分からないなど問題点が目立っていた印象です。謎解き要素の強い作品で多数の伏線を残すというのは、はっきり言ってタブーではないでしょうか。責任を持って作品を締めくくって欲しかったです。
3 見ていて不快になる描写が多かった
個人的に、暗い設定や重くなりがちな要素自体は嫌いではありません。しかし本作はこういった部分ばかりを強調していてバランスが悪かったなという印象です。キャラクターがリアルな悩みを抱えているというような設定は確かに話題にはなりやすいですが、正直そういった描写が苦手な読者も多いですし、連発は避けるべきだったのではと思います。
そもそも、少年誌と暗い要素は基本的に合わせるのが難しい気がします。扱う場合は爽快感のあるシーンや笑える場面を組み合わせたほうが良いと思うんですよね。
ジャンプのヒット作では、たとえば魔神探偵脳噛ネウロなどは数々の犯罪者が登場しますが、主人公のネウロが犯人を成敗するある意味勧善懲悪の流れになっていること、顔芸など面白い場面も多く不快感が中和されていた点が上手いなと思います。また、DEATH NOTEも主人公の月がノートを使った犯罪に手を出すという設定ですが、こちらも笑えるシーンが多いこと、月が始末するのは基本的に犯罪者のみであることなどが人気に繋がったのではと思います。
一ノ瀬家の大罪はいじめ、家出、介護、援助交際など重くなりがちな設定を多数描いていましたが、はっきり言ってただそれだけだったんですよね。暗い気分を中和する要素もなく、不快になるだけだったというのが正直なところです。上の項目でも少し触れましたが、結局真相が分からないまま終わってしまう設定が多かったこともマイナスでした。
上手く描写出来ていない暗く重い要素というのは、はっきり言って欠点でしかないと思います。扱う場合はバランスを考えて、しっかり描き切るべきだったのではないでしょうか。
厳しい言い方になりますが、本作は不快な部分ばかり目立ってしまっており、読者を楽しませる気があったのかなと考えてしまいます。少年誌であることを意識して、読者が受け入れられる設定で描いたほうが良かったのではないでしょうか。
第一話はミステリアスで本当に惹き込まれましたし、暗く重い部分も良いスパイスになってくれるのではと期待したのですが、夢オチばかりでストーリーを把握出来ない、不自然な部分が多い、少年漫画らしい熱さや爽快感がない、など、物語が進むにつれてどんどん問題が浮き彫りになってしまったというのが正直な感想です。基本設定はとても面白かったので非常に残念でした。
特に、家族がバラバラになるきっかけになった事件についてはしっかり描写して欲しかったです。肝心な部分を描かず、不快な要素ばかりが強調されているなと感じたんですよね。
しかし、最終話の「上手く行かなくても家族は家族」といったメッセージはグッと来ましたし、ささいなきっかけで人間関係は歪になってしまうという描写などもリアルだったと思います。インパクトの強い設定を描けることや家や部屋の様子でキャラクターの内面を表すセンスなども好きなので、タイザン5先生には個性を活かし、暗い雰囲気をコントロールした新作を描いて欲しいです。
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