新品価格 |
短期連載(打ち切り)となった作品を取り上げ、分析する記事です。今回は週刊少年ジャンプ2023年18号にて最終回を迎えた大東京鬼嫁伝について書かせていただきます。あらすじや設定につきましてはこちらをご覧ください。
それでは短命に終わったことから、打ち切りの理由になったと思われる問題点について考えて行きます。
1 設定を活かしきれていなかった
進太の家庭の事情や彼を狙うあやかし娘達など興味深い設定は多かったのですが、それを話に活かせていなかったなというのが正直なところです。最終回でも特に触れられなかったので、疑問の残るラストになってしまったんですよね。
花札家については現在の構成になるまでの流れがかなり複雑なはずなのに、ほとんど説明がなく進太達に感情移入しづらかったです。同時に家族の絆なども分かりにくくなってしまったんですよね。後で描写する予定だったのかもしれませんが、重要な設定なら少しずつ読者に伝えていったたほうが良かったと思います。
あやかし娘については、進太を狙うあやかし娘が現れる→一話から数話で退場という展開が特に中盤以降増えて行き、読んでいて飽きてしまいました。はっきり言って先の流れも簡単に予想出来ますし、新鮮味がなくなってしまうんですよね。
また、退散したあやかし娘のその後がほぼ描かれなかったのも残念なところです。デザインなどは好きなキャラが多かったのですが、キャラを把握する前に出番がなくなってしまうという流ればかりで、愛着などを持ちづらかったんですよね。
個人的には、物語を動かすきっかけになったかばねが登場しなくなったことが特に引っかかりました。メイン回の展開的に花札家に同居しているはずなのに、会話にすら全く出て来なくなるというのは正直かなり気になりました。
無闇にキャラを増やさずに、必要な設定を描写することが重要だったのではないでしょうか。面白くなりそうな設定やキャラは多かったのに、それを活かした盛り上がりを作れていなかったというのはやはり問題だと思います。
2 ラブコメ要素を感じにくかった
血の繋がらない姉や妹と暮らす男子高校生のもとに、幼い頃結婚の約束をした少女がやって来る、というハーレムものにありそうな冒頭だったのに、最後までラブコメ要素をほとんど感じられなかったというのが正直なところです。タイトルの嫁というのも愛火が自称していることがほとんどで、ときめくようなシーンもはっきり言ってかなり少なかったんですよね。
そもそも、進太の性格が正直ラブコメ向きではなかった気がします。恋愛に興味がない、という設定だけなら良いのですが、愛火やあやかし娘にアプローチをかけられても動じるようなことがなく、はっきり言って見ていて面白くなかったんですよね。むしろ女性に耐性がなくてすぐに動揺してしまう、くらいの描写のほうが読んでいてドキドキ出来たのではと思います。
逆に、女性達に狙われていることを逆手にとってハーレムを築いてやる、と豪語するくらいのキャラでも面白くなったかもしれません。女子に積極的にアピールするような性格ならあやかし娘達の魅力も充分に描けますし、ラブコメとしても面白くなりそうですよね。
また、途中で退魔要素をメインにするのかなとも思ったのですが、結局そちらも活かせておらず残念でした。厳しいようですがラブコメ部分も含めて色々な要素が中途半端だったため、結果的に話が分かりにくくなってしまったんですよね。
進太と愛火との関係が最終回までほぼ進展しなかったのも個人的には残念でした。もちろん家族や仲間としての絆は深まったことは伝わりましたが、進太が愛火を恋愛対象として意識するような場面がなく、やはりラブコメとしては問題だったのではと考えてしまいます。
愛火がヒロインとしてかなり幼かったのも、盛り上がりに欠けた原因かもしれませんね。外見年齢をもっと上げても良かったのでは、と思います。
ラブコメとして良い意味でベタな出だしだったのに、はっきり言って期待を裏切られてしまったなと感じたんですよね。特に進太と愛火の設定は見直しが必要だった気がします。
3 細かい部分の矛盾が多かった
ひとつひとつは小さなミスでしたが、容認出来ないレベルで多かったので問題点として挙げさせていただきます。描写や展開の違和感が目立っており、読んでいて話に集中出来なかったんですよね。
パッと思い出せるだけでも、鍋の〆を作る予定なのに姉と妹が別室に移動する、ラーメンを食べに行くという展開なのに説明もなく入浴シーンが挟まれる、右の指三本という条件が翌週にはどちらかの片手という設定に変わっている、など複数のミスが浮かびます。細部の矛盾は見直しすれば防げるはずなので、正直構想を練っていないのではと思えてしまったんですよね。
特に後半に入ってからはかなりミスが増えていた印象です。打ち切りが決まっていたのかもしれませんが、最後まで手を抜かずに描いて欲しかったなと感じます。
もちろん矛盾が気にならないくらい漫画が面白ければ良かったのですが、前述の通りストーリー面の粗も目立ってしまっていたので余計に引っかかってしまったんですよね。小さなミスで評価を下げる結果になったのはもったいなかったなと思います。
細部のミスが多いというのは短命に終わった漫画にはよく見られることなのですが、個人的にはやはり残念に感じます。キャラクターやストーリーを生み出した以上はしっかりと世界観を把握し、読者が集中出来るように物語を描いて欲しいです。
振り返ってみると、キャラや設定には光る部分も見られるのにそれを活かしきれなかったことが一番の敗因だったのではと思います。個別項目にはしませんでしたが、右手と左手が頻繁に入れ替わる、分かりにくいコマ割りが多いなど作画面のミスが頻発している点も気になりました。
また、キャラクターのデザインは全体的に好きなのですが、愛火の角部分は正直最後まであまり可愛いと思えなかったんですよね。個性を出すためだったのかもしれませんがナメクジのようにも感じてしまいますし、魅力には繋がっていなかった気がします。
出だしや設定がラブコメとしてベタだった点はむしろプラスだと思いますし、無理にキャラを増やさずにドタバタしつつ進太と愛火が惹かれ合う展開を丁寧に描けば違う結果になった気がします。読み切りや第一話はとても良かったですしキャラクターのデザインも好きなので、また仲間先生の作品を読んでみたいです。
レビューランキング
にほんブログ村
0 件のコメント:
コメントを投稿