2023年1月20日金曜日

短期連載(打ち切り)作品解説 最後の西遊記

 

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短期連載(打ち切り)となった作品について注目、分析する記事です。今回は週刊少年ジャンプ2019年38号にて最終回を迎えた最後の西遊記について書かせていただきます。あらすじや設定につきましてはこちらをご覧ください。
それでは短命に終わったことから、打ち切りの理由になったと思われる問題点について考えて行きます。


1 話や設定が重すぎた

主人公の龍之介に目と手足に障害を持つ義妹、コハルが出来る、というところから物語が始まるのですが、コハルのことも含めて設定が重すぎたというのが正直なところです。他のストーリーもスカッとするような部分が少なかったんですよね。
第一話の序盤で「父から突如学校も休んで付きっきりでコハルの世話をすることを命じられる」というシーンが描かれているのですが、はっきり言ってこの時点でかなり重苦しい気分になりました。介護の苦労の描写がリアルだったので、余計に龍之介が可哀想に見えてしまったんですよね。
もちろんこれは後の話への伏線で、コハルは龍之介にとっても大切な存在になって行くのですが「子どもに介護を押し付ける」という父の行動には正直かなり嫌悪感が湧きました。息子に理由を話せないというのは分かるのですが、ひとりになった際に謝罪の言葉を呟くなど、せめて読者にだけは父が苦悩していると伝わる場面が欲しかったところです。
当時から虐待に等しい行いとしか思えませんでしたし、今連載されていたらヤングケアラーとして更に批判が集まったのではとも考えてしまいます。はっきり言って、少なくとも第一話で描く内容ではなかったと思います。
また、龍之介が「学校生活を楽しんでいる小学生」だったのもこの展開と相性が悪かった一因な気がします。他誌になってしまいますが、たとえば金色のガッシュ!の清麿のように「学校を退屈に思っている中学生」などなら印象も違ったと思うんですよね。
龍之介の設定だと、コハルの世話を命じられたことには同情心しか湧かないんですよね。アイアンナイトの個別記事でも書きましたが、やはり小学生と重く暗い物語は基本的に合わないのではと感じます。この点については次の項目で詳しく解説いたします。

他にも「すぐに再生出来るから」と大怪我を負うような攻撃が何度も描写されるなど、ダークな世界観に引っかかってしまったというのが正直なところです。少年誌に合っていたとは言えませんし、主人公の年齢についてももう少し考えて欲しかったと思ってしまいます。


2 メインのキャラクターデザインに惹かれなかった

先ほどの項目でも少し触れましたが、龍之介、コハルが子どもの設定だったのも正直ヒットに繋がりにくかった理由だと思います。外見も年相応に幼く、かっこ良さや可愛さより子どもっぽさを先に感じてしまったんですよね。
こちらもアイアンナイトの記事に書きましたが、ダークな世界観と龍之介達の年齢の相性も良くなかったと思います。容姿だけでももっと大人っぽければ感じ方も違ったかもしれませんが、幼い少年少女に困難ばかりが襲いかかる、というのはジャンプでは難しい題材なんですよね。
龍之介やコハル以外でも、後にふたりの師匠になるニロが三十代とされているのに同年代にしか見えない点なども気になりました。特殊能力を持つキャラなのでそのせいなのかなとも思ったのですが、最後まで説明がないため引っかかったままだったんですよね。龍之介の両親などは年相応に描かれていたので余計に気になってしまいました。

主人公達の子どもっぽさに引っかかりましたし、他のメインキャラのデザインも気になってしまったのは残念なところです。逆にメインキャラのひとりであるエステルは小学生ではあるのですが龍之介達より年上で、お姉さんっぽさが魅力的な美少女という特徴もしっかり伝わって来て良かったです。龍之介達の年齢だけでも見直せば違う結果に繋がったのではと思います。


3 設定が複雑だった

短命に終わったものの、龍之介の誕生の背景や彼とコハル達の使命などはしっかり描かれている本作ですが、設定が複雑でとっつきにくかったというのが正直なところです。まだ情報を整理出来ていない内に次の設定が明かされるので、ストーリーを把握しづらかったんですよね。
龍之介やコハルの名前が伏線になっている点は良かったのですが、明治文学などを扱っていたのも理解を難しくしていた一因だと思います。特に少年達にはそこまで馴染みのない題材ですし、上手く描かないと面白さには繋がらない気がするんですよね。
また、他の要素が増えて肝心の西遊記の設定を感じにくくなったのも残念でした。最終的にはきちんと活かされていたのですが、中盤は違う文学作品を元ネタにした要素の描写ばかりだったため、はっきり言って脱線しているようにも見えてしまったんですよね。

よほど作品が軌道に乗っている場合は別にして、難しい設定がいくつも登場する、というのは読者離れが進んでしまう展開のひとつだと思うんですよね。テーマだった西遊記が終盤まであまり描かれなかったのも残念だったので、構成を考えて欲しかったです。


正直第一話の時点で印象が良くありませんでしたし、キャラの設定や世界観の暗さで更に読む気が薄れてしまったんですよね。特に序盤はしっかり構成を考えたほうが良かったのではと思います。
また、テーマの西遊記があまり活かされていないように見えてしまったのも問題だったと感じます。第一話に引っかかったのは確かですが西遊記が題材の、現代を舞台にしたダークファンタジー」という部分は面白そうだと思ったので、しばらく描写がないのは残念でした
ただ、前作無刀ブラックの頃から画力は非常に高いと思いますし、龍之介達が世界中の人々に見守られながら脅威に立ち向かって行くラストシーンなどはとても魅力的でした。構成や設定をしっかり考えて、野々村先生には今後も頑張って欲しいです。


りは「正直、第一話でつまずいたのが痛かったと思います。
重い世界観の話を作る場合、
読者が不快にならないようにバランスをとらないとヒットは難しいんですよねー」




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