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短期連載(打ち切り)となった作品について注目、分析する記事です。今回は週刊少年ジャンプ2014年18号にて最終回を迎えたアイアンナイトについて書かせていただきます。あらすじや設定につきましてはこちらをご覧ください。
それでは短命に終わったことから、打ち切りの理由になったと思われる問題点について考えて行きます。
1 世界観が暗すぎた
住んでいる街がゴブリンによって破壊され、同じくゴブリンの力を手に入れた主人公(鉄兵)が敵と戦いながら生存者を探しに行く、という第一話なのですが、正直この時点でかなり重苦しい気分になりました。インパクトは強かったものの恐怖を感じる設定なんですよね。
第一話は読者を惹きつけるためにわざと暗く表現しており徐々に爽快感も強くなって行く、などならば問題なかったと思うのですが、しばらく重い展開が続いていたのもマイナスだった気がします。特に、変身した鉄兵を親友のカズモチが「バケモノ」と拒絶するシーンは本当に辛かったです。もちろん相手も子どもですし、異常な事態に巻き込まれて混乱していたというのは分かるのですが、やはり酷いな、という感想を抱いてしまいました。また、カズモチはその後敵と戦う鉄兵を応援していましたが、すぐに手の平を返したようにしか見えずはっきり言って不快でした。
世界観が暗かった分、むしろ「鉄兵をよく知らない大人は怖がっているけれど、元々親しかったカズモチは信じてくれた」など、王道で鉄兵が救われる描写を入れても良かった気がします。この辺りはバランスが大切ですよね。
次の項目で詳しく解説しますが、世界観が暗いだけならば大きな問題にはならなかったと思います。ただ、序盤にほとんど爽快感がなく、すぐに主人公の味方になるキャラが不快だったというのは厳しいようですがマイナスになっていた気がします。年齢的にも、友達は鉄兵をすぐに受け入れてくれた、で良かったと思うんですよね。
2 絵柄とストーリーが合っていなかった
可愛らしい絵柄は個人的にも好きですし画力も高いと思うのですが、重すぎるストーリーとの相性は正直良くなかった気がします。絵と世界観が合っていませんでしたし、そのギャップを活かすような描写もなかったんですよね。
主人公が小学生という設定も難しかったかなと感じます。特に鉄兵と同世代のジャンプ読者には、ちょっと年上の主人公のほうが人気になりやすいと思うんですよね。自分の小学生時代を思い返しても、やはり中高生の主人公に憧れていた気がします。
実際、ジャンプだとギャグ漫画以外のヒット作で小学生主人公は非常に少ないですよね。ヒカルの碁や、年齢で考えればNARUTOもそれに当たるかもしれませんが、ヒカルの碁は序盤で中学生になっていますし、NARUTOは第一話でアカデミーを卒業していますよね。
また、鉄兵は絵柄も相まって子どもらしくて可愛かったのですが、過酷な環境にいることが可哀想に見えてしまう部分もありました。一定以上の年齢の主人公が辛い境遇にいるのは耐えられるけれど、小さい子が虐げられている作品は読めない、といった意見は多いですし、個人的にも同感です。やはり主人公の年齢はもう少し上げても良かった気がします。
ただ、先ほどの項目でも書いたように、世界観が暗いだけならマイナスにはならなかったと思います。実際、近年の代表的ヒット作の鬼滅の刃や呪術廻戦も重苦しい描写は多用されていますよね。他誌でも進撃の巨人などは似たタイプの作品だと感じるのですが、いずれも主人公は中学生相当以上の年齢ですし、また過酷な戦いの中でも少し笑えるようなシーンが多いことが特徴だと思います。アイアンナイトは終始暗く、幅広い読者を獲得しづらかった気がします。
世界観がとっつきにくかったことに加えて、絵柄が合っていなかったことは、厳しいようですが問題だったと思います。可愛い絵と相性の良い作風にする、シリアスなストーリーの中でもホッと一息つけるシーンをバランス良く描くなどの工夫が必要だったのではと感じます。
3 メインキャラのバランスが良くなかった
鉄兵と両想い状態の翼と、鉄兵と対になる能力の持ち主ユキといういわゆるダブルヒロインなのですが、正直この設定は必要なのかなと思ってしまいました。ユキが登場した時点で疑問だったんですよね。
そもそも、ダブルヒロインの扱いはかなり難しいんですよね。上手く両方を活かせずファンが荒れてしまう作品も多い印象です。アイアンナイトはダークファンタジーのバトル漫画なので女子キャラが重要視されるジャンルではないですし、ヒロインを増やさなくても良かったのではと考えてしまいました。鉄兵達は小学生で、恋愛要素も薄いものでしたしね。
幸い鉄兵は翼に一途でしたし、ユキはあくまでも仲間というポジションで鉄兵と翼の関係も応援していたので、恋愛ヒロイン、バトルヒロイン、と住み分けは出来ていたと感じます。ただ厳しいようですが、それでもふたりのヒロインが必要だったとは思えないんですよね。
また、アイアンナイトはプロトタイプに当たる読み切り版(ゴブリンナイト)では能力の使い手となるヒロインがひとり登場しただけだったんですよね。ジャンプnextの読み切りで設定を変えたとのことですが、何故わざわざ描き方の難しいダブルヒロインにしてしまったのだろうと考えてしまいます。
連載終了が早かったので問題視されることはほぼなかったものの、ヒロインがふたりいるという状況は長く続いていたら荒れる原因になっていた気がします。アイアンナイトに限らず、妥当な理由もなく複数のヒロインを動かすのは正直悪手だと思うんですよね。
絵にもストーリーにも光る部分はあったものの、可愛らしい絵柄と重苦しい世界観の相性が良くなく、充分に楽しむことが出来なかったというのが正直なところです。キャラクターにもマイナス要素を打ち消すほどの魅力はなく、また読み切りの設定が活かされていないのも残念でした。
悲惨な状況の中で立ち上がる主人公自体はむしろ王道だと思いますし個人的にも好きなので、メインキャラの年齢層を引き上げるだけでも結果は違った気がします。小学生達のデザインが可愛かったことは確かですが、画力が高いので大人キャラも充分描けていましたしね。
特徴的な可愛らしい絵柄か、暗いけれど惹き込まれる世界観か、今後の作品ではどちらかに特化出来れば人気の獲得も可能だと思います。屋宜先生の新たな漫画を楽しみに待たせていただきます。
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