3 主人公サイドの能力の描写に違和感があった
衛児含む主人公サイドのキャラクター達は、ストレスや強い思いによって発現する能力、リビドーの持ち主なのですが、大事な設定なのに引っかかる部分が多かったというのが正直なところです。
まず肝心の衛児ですが、手芸好きであること、朱梨を赤い糸で引き留めたいと願ったことがきっかけで糸を操るリビドーに目覚めます。ただ、これについての描写が既に気になりました。
序盤で能力を見たこともないキャラ(七海)から「糸のリビドーなんて最弱だ」と貶されるのですが、糸使いにそこまで弱いイメージはないんですよね。むしろ細くて自由に動かせるため使いやすそうですし、束ねれば丈夫な武器にもなります。読者はこの段階で衛児のリビドーについて知っていますし、何故か彼の能力を否定する七海には、はっきり言って違和感がありました。ONE PIECEのドフラミンゴも充分に強いキャラですよね。
また、便利さに反して見た目は正直地味で、主人公の能力としては扱いにくかったかなとも思います。そのため「漫画内では造形には触れられずただ弱いと判定されているけれど、読者からすると応用は効くものの地味な能力」という状況で、作中の描写と読者の認識にズレが生じてしまっていたんですよね。
そして、他のリビドーの描写にも引っかかるところがありました。特に気になったのは大矢 門人の全身を硬化させる能力です。門人が衛児とガレージキッドの女子(音羽)を自分にしがみつかせ飛び降りる、というシーンがあるのですが、鉄の塊に縛られたような状態で落下した人間が無事でいられる、というのは引っかかりました。ここは終盤の見せ場であるバトルシーンだったので、もう少し煮詰めて欲しかったです。
終盤発動した素張(衛児のライバル的なキャラ)のハサミのリビドーは衛児と対になっている設定も含めて好きだったので、メインであるガレージキット達の能力が引っかかってしまったのは残念でした。子ども達がリビドーを活かして大人に立ち向かって行く、という構造は面白くなりそうだったので、能力の詳細をもっと練れば人気にも繋がりやすかったはずです。
振り返ってみると、主に衛児達の設定が煮詰められておらず違和感を覚える描写が多かったことが敗因だったと思います。一話の時点では大人に刃向かう衛児のキャラが熱く、コンセプトも王道で分かりやすく画力も高かったのにこれは残念ですね。逆に考えると、いくら他の部分が魅力的でも主人公達を応援出来ないと長くは続かない、という教訓にもなっている気がします。
ただ、特に終盤は印象的なシーンも増えていたと思います。上述した素張との対決や、ラストの「自分より強大な相手に挑み続ける限り、人はきっと永遠に子ども」というナレーションなどは好きでした。やはりテーマ自体は少年誌にも合っていますし魅力的だったと思うんですよね。
絵柄や良い意味で泥臭いストーリーは好きなので、主人公達の設定をきちんと考えた作品をまた読んでみたいです。敵キャラを魅力的に描けるのも武器だと思うので、そこは今後も活かして欲しいですね。
りは「テーマや設定は王道なのに主人公が不快、というのは正直戸惑いますねー。
キャラが読者にどんな印象を残すのか、しっかり考えるのが大切だと思います」
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