2022年8月26日金曜日

短期連載(打ち切り)作品解説 U19 1/2



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短期連載(打ち切り)となった作品について注目、分析する記事です。今回は週刊少年ジャンプ2017年28号にて最終回を迎えたU19(全17話)について書かせていただきます。あらすじや設定につきましてはこちらをご覧ください。

それでは短命に終わったことから、打ち切りの理由になったと思われる問題点について考えて行きます。



1 主要キャラクターの魅力が伝わりにくかった


「子ども達を支配する大人党を倒し世界を変える」という目的は良い意味で単純ですし分かりやすくなっていますが、成し遂げようとする主人公を含むキャラクター達に好感を持ちにくかった点が残念でした。

主人公の衛児は大人党ばかりが持て囃される世の中に元々疑問を持っておりその思想自体は理解出来るのですが、正直やり方がかなり乱暴ですし悪い意味でまさに「子どもがわめいているだけ」になってしまっているんですよね。

初めに疑問に思ったのは、ヒロインの朱梨がエリート校に移ることを身勝手に止めようとするシーンでした。ふたりはいわゆる両片想い状態で朱梨自身も衛児や友人と離れることを嫌がってはいるのですが、作中の制度ではどう考えても転校したほうが朱梨のためになりそうなんですよね。もちろんそのまま送り出すことが正しいとも言いませんが、朱梨の幸せのためには応援したほうが良いだろうけれど納得出来ない、といった葛藤シーンをもう少し挟むべきだったと思います。

そして、ネット上でも批判されていた担任教師(谷)を追い出すという展開は、やはり正直不快でした。個人的には谷自身も擁護は出来ないのですが、それでも冤罪をでっち上げて無理矢理辞職させるというのは主人公サイドがやることではないでしょう。この時点で悪手でしたが、谷がいなくなったことを衛児達がバカにして笑い飛ばすシーンが更に問題だったと感じます。ムカつく相手は正当な方法でこらしめてこそすっきりすると思うんですよね。卑怯な手段を用いたのに集団で爆笑するのは、厳しいようですが完全に悪役のやることです。

また、次の項目で詳しく書きますが、大人党は確かに問題は多いものの正しい部分もあるんですよね。大人党をかたくなに否定して暴れるだけの主人公達には、正直魅力を感じられませんでした。


とにかく、衛児を中心とした主要キャラクター達にほとんど共感出来なかったというのが正直なところです。力のない子ども達が理不尽な大人に抗う、というのは王道の展開なのですが、はっきり言って衛児達のほうが自己中心的に見えてしまったんですよね。こういった展開が序盤に続いたことで、読者離れが進んでしまったような気がします。



2 悪役サイドのキャラクターのほうが応援しやすい構成になっていた


上の項目でも少し触れましたが、大人党の政策は正直納得出来る部分も多かったんですよね。主人公の敵なのですからもっと不快感を全面に出したほうが良かったのでは思います。

もちろん必要以上に子ども達を抑圧する、戦争を計画しているなど問題点も目立つのですが、実際に日本の景気はかなり改善されているんですよね。ランクによる差別が根付いているのは良くないですが、低ランクでも一定以上の収入と住まいが保障されるというのは政党として非常に優秀なのではと感じてしまいます。この暮らしで救われている人もたくさんいるのでは、とどうしても考えてしまうんですよね。

また、ラスボス的な存在の作中の総理大臣、四季大和はカリスマ性を感じるキャラであり、正直個人的には衛児達よりも好きでした。かなり過激な思想の持ち主なのですが言動も一貫していますし、部下に感謝を示す、突然襲撃して来た衛児達(ガレージキッド)の能力を見抜いて即座に対応するなど、印象に残るシーンが多いキャラでした。擁護出来ない部分もありますが衛児達を応援しづらかったこともあり、大和のほうが魅力的に思えてしまったんですよね。

そして、子ども達が生活のほぼ全てを制限されている、という設定のため、一話の冒頭では髪を伸ばしていた女子生徒が丸刈りにされるのですが、このとき指導していた谷の台詞からして髪を整える猶予期間はあったみたいなんですよね。現代の基準からすれば乱暴なことは確かですが、坊主頭にされるのが嫌ならその期間に切ってくれば良かったのではとも感じてしまいました。作中で大人達の悪行とされている部分も納得出来なかったりしたんですよね。


厳しいようですが、衛児達の暴挙は理解出来ないのに大人党の政策や言動には頷けるという、本末転倒な描写が多かったと思います。高ランクになれば何不自由のない生活だけれど低ランクの場合は何とか生きていけるレベル、くらいに極端な設定のほうが敵役としてはちょうど良かったはずです。正義側と悪役側にもっと説得力が欲しかったです。



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