2022年8月5日金曜日

短期連載(打ち切り)作品解説 総合時間事業会社 代表取締役社長専属秘書 田中誠司



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短期連載(打ち切り)となった作品について注目、分析する記事です。今回は週刊少年ジャンプ2018年50号にて最終回を迎えた総合時間事業会社 代表取締役社長専属秘書 田中誠司(全20話)について書かせていただきます。あらすじや設定につきましてはこちらをご覧ください。

それでは短命に終わったことから、打ち切りの理由になったと思われる問題点について考えて行きます。


1 あらゆる面で週刊連載に耐えられていなかった


これが根本的かつ最大の問題点ではないでしょうか。中盤辺りから絵もストーリーも正直かなり質が下がってしまっていました。

まず絵についてですが、特に後半は明らかに力尽きて手を抜いているとしか思えない箇所が散見されました。具体的に挙げるとキャラの片目しか描かれていない絵、そして何よりもざっと目を通しただけでも分かるレベルでコピペが多用されていたんですよね。はっきり言って画面としてもつまらないと感じました。

作者の天塚先生は当時現役の大学生でまだ若く、初連載だったということもあり画力もそこまで高レベルではなかったため、余計に読む気が失せてしまいました。ただ、お若かったことも考慮すると先生だけの責任ではないとも思います。担当の方との連携がとれていれば上手く休憩なども出来たはずなので、その辺りがかみ合っていなかったのかなとも予想しています。

そしてストーリー的にも、終盤で様々な設定が伏線もなく明かされており、上記の絵の雑さも相まって読みにくかったというのが正直なところです。人間世界宝3'sの三人目については名前すら登場しませんでしたしね。これは短命に終わった漫画では比較的よくあることですが、やはりもう少し構成を考えて欲しかったと思います。


画力は高くなくとも個性もあり好きな絵柄だったので、手抜きは正直残念に感じました。

ストーリーの欠点も含めて、天塚先生の成長前に連載終了してしまったのかもしれませんね。


2 主人公(田中)の能力に魅力を感じられなかった


秘書という職業を活かして名刺や印鑑などを駆使して戦う田中ですが、インパクトに欠けていたというのが正直な感想です。

この設定自体は個人的には好きなのですが、結局投げつけるだけで終わることがほとんどであり、面白さを感じられませんでした。能力自体がそこまで斬新でなくとも演出などで魅せることは出来たと思うのですが、上記の通り画力もそこまで高くなく、はっきり言ってバトルシーン自体が分かりにくい部分も多かったため、絵での魅力作りも出来ていなかったと思います。


一見地味な能力が実はとても有用だった、という展開は上手く使えば盛り上がったはずなのでもう少し練って欲しかったです。

たとえばですが名刺を受けとってしまった相手はしばらく田中の名前ばかり考えてしまう、のように何かプラスした効果があれば良かったと思います。


3 既存作品の影響を受けすぎていた


洋画にはあまり詳しくないのですが、それでもターミネーターの影響を強く感じてしまう作風でした。実際当時、周囲やネット上でも指摘の声が多かったです。

「田中誠司」シリーズについては金未来杯にて優勝した特別国家公務員改造者対策課~しか知らないのですが、このときは人造人間という描写はなかったので、連載になった際に何故かターミネーターに近い設定が足されてしまった、というのが正直な印象でした。目的はむしろ全く逆とも言えますが、人造人間が現代で使命を果たすために未来からやって来た、という基本設定が同じなので指摘されて当然だと思います。

もちろん設定部分だけであればいわゆる盗作にはあたりませんし、それ以上の独自性が出せていれば良かったと思います。ただ、正直ストーリーにも絵にも個性や魅力が感じられなかったため「ターミネーターに似た作品」という印象のまま終わってしまいました。


能力の項目でも触れましたが、設定や細かいストーリーを練れていなかったように感じます。

天塚先生は連載への予行練習を兼ねて田中を主人公にした作品を何パターンも描いていたようですが、既存作品の影響を強く受けたこの設定を採用してしまったのは正直悪手だと思います。また、いたずらに描くだけではなく、設定などをしっかり見直したほうが結果に繋がる可能性が高かったでしょう。



まとめてみると、準備が整っていないまま描いてしまったのかなというのが正直なところです。

もちろんお忙しかったのだとは思いますが、金未来杯優勝後二年ほど経過してからの連載だったので、この期間にもっと世界観や設定を固めたほうが良かったでしょうね。

ただ、終盤になってから登場した最川のキャラなどは魅力的でしたし、特に読み切りの際はヒロインもとても可愛く適度に個性的に描けており、光る部分は色々と感じられました。まだ二十代でお若い方なので、今後の成長と次回作に期待させていただきます。



りは「総時社の設定や田中誕生に時岡が関わっていた展開とかは好きでした。

   画力を磨いて、オリジナリティのある新作を見せて欲しいです」


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