2022年8月16日火曜日

短期連載(打ち切り)作品解説 無刀ブラック 1/2



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短期連載(打ち切り)となった作品について注目、分析する記事です。今回は週刊少年ジャンプ2013年36号にて最終回を迎えた無刀ブラック(全13話)について書かせていただきます。あらすじや設定につきましてはこちらをご覧ください。

それでは短命に終わったことから、打ち切りの理由になったと思われる問題点について考えて行きます。



1 既存作品の影響を受けすぎていた


正直あまり詳しくはないのですが、それでも時代物であること、主人公(雪路)の信条、そしてキャラクター同士の関係などから「るろうに剣心」の影響を強く感じてしまう作風でした。編集さん達が指摘するべきだったのでは、というレベルで設定が被っていると思います。また、るろ剣を超える部分もはっきり言って感じられませんでした。

映画化もされている大ヒット作ですから、比較すると見劣りしてしまうのは当然だとも思います。そして、偉大な漫画にこれだけ似ていると「るろ剣を読めば良いや」と感じる読者が出て来ても正直仕方ないはずです。無刀ブラック連載当初から見てもるろ剣は20年ほど前の作品でしたが、メディア展開もされていますし、老若男女問わず内容を知っている読者は多かったと思います。「設定が被っていても若い世代には受け入れられる」と考えたのだとすれば、それはちょっと早計だったと言わざるを得ません。

たとえば雪路は道場を開くのではなく大家(藪)の用心棒を務めており、その働きぶりを見た人々が徐々に雪路の武術に関心を持つようになる、など、どこか一か所でも設定を変えればもう少し読者は定着しやすかったと思います。「似た設定のまま見どころもなく終わってしまった」というのが正直なところです。


既存作品の影響を感じる短期連載漫画は結構多いのですが、どの作品も設定を真似ただけで独自の武器を生み出せなかったことが敗因になっている気がします。もちろん人気漫画から学ぶのは大切なのですが、設定をしっかり理解した上で、自分の作品へと昇華させたほうが長続きするはずです。無刀ブラックも「るろ剣で見た」と感じてしまう部分が多く、そこが残念でした。



2 キャラクターのバランスが悪かった


雪路と一人目の門下生であり準主人公の少年、継春は、互いを尊重し守る関係にあるのですが、描き方に正直引っかかる部分がありました。

第一話で雪路は継春の人柄や心意気を見込んで道場に勧誘しますが、初対面の継春を過剰に褒め続けており少し違和感を覚えました。もちろん内面に惚れ込んで、という意味なのは分かるのですが「一輪の月」や「私の誇り」はそこまで言う?と感じてしまったというのが正直なところです。当然ながら第一話の段階ではまだキャラも掴めませんし、登場したばかりで雪路自身も会って間もない相手を絶賛されても響かないんですよね。

そして、この濃すぎる関係が続いてしまったのもはっきり言ってクドいと感じました。涙を流して互いへの思いを吐露するシーンが多く、割と早い時期に食傷気味になってしまったんですよね。熱い友情なら大歓迎ですが雪路の過去が重かったこともあり、正直薄暗く感じてしまいました。男性同士の湿っぽい関係は少年誌では求められていないと思います。

また、ヒロインについても気になりました。いわゆる男装少女なのですがそもそも女性だと推測出来る伏線がほとんどなく、性別が明かされたときは良い意味で驚くというより、これで女性というのは無理があるだろう、と感じてしまいました。たとえばニセコイのつぐみの初登場時などは「ほぼ全員が男子だと勘違いしているけれど幼馴染の千棘や鋭い生徒は見抜いており、ボディラインも女性的」と上手く表現されていましたよね。性別についてはほぼ予想通りでしたが明らかになるシーンは盛り上がっていましたし、魅力的なキャラになっていたと思います。

無刀ブラックのヒロインは、正直男装少女ならではの良さを感じられませんでした。上記の通り伏線がなかったことはもちろんですが、雪路や継春が正体を知って驚くシーンや、逆に男性だと思ったまま日常を過ごして行くというギャグなどもなく、設定を活かせていなかったと言わざるを得ません。特徴的なヒロインを生み出しただけで満足するのではなく、魅力をしっかり見せるべきだったと思います。


主人公と準主人公の関係は王道から外れており、ヒロインも活かせておらずキャラクターが作品の評価に繋がらなかったというところでしょうか。個々のキャラ設定は面白くなりそうな部分もあったので、そこを磨いて欲しかったです。





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