2022年10月27日木曜日

短期連載(打ち切り)作品解説 すごいスマホ

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短期連載(打ち切り)となった作品について注目、分析する記事です。今回は週刊少年ジャンプ2022年46号にて最終回を迎えたすごいスマホについて書かせていただきます。あらすじや設定につきましてはこちらをご覧ください。

それでは短命に終わったことから、打ち切りの理由になったと思われる問題点について考えて行きます。



1 非常識な部分が目立っていた


事件などの描き方に納得出来ない部分が多かったというのが正直なところです。すごいスマホという現代の常識が通用しない端末を用いた推理、サスペンスものですし、派手な描写は確かに必要だったと思います。ただ、読者の許容範囲を超えてしまっていたような気がするんですよね。

まず違和感を覚えたのは、やはりタワマン襲撃事件の規模でした。被害者、被害額ともに相当な数に上ってしまっており、現代日本の一都市で発生した事件としてはあまりにも凶悪すぎたと思います。また、完全な異常事態にも関わらず、翌日から住人達がごく普通の生活を送っている様子なのも気になりました。政府や警察が総力を挙げて人々を守る、別の場所に避難するなどの対策が必要な状態だったと思います。あくまでも「すマホを使った事件例」として扱うのなら、もっと規模を縮小したほうが良かったのではと考えてしまうんですよね。

他に、藻浦を強く咎めず擁護するようなシーンが多いことも引っかかりました。ギャンブルで稼ぐだけなら許容出来ましたが、窃盗などの犯罪も繰り返すキャラが何故大切に扱われているのか、とストレスになってしまったんですよね。これについては次の項目で詳しく書かせていただきます。

最終盤でも、許可をとる場面が描かれていないのにQ達が警察署内の資料をチェックしているシーンなどが気になりました。連載終了が決定して時間がなかったのかもしれませんが、重要な場面はしっかり見せるべきだったと思います。


すごいスマホという非現実的なアイテムがメインの作品だからこそ、他の部分のリアリティが大切だったのではと感じてしまいます。あまりにも非常識な内容だと、真剣に読む気が失せてしまうんですよね。



2 キーとなるキャラ(藻浦)に好感が持てなかった


既にこのブログでも何度か触れていますが、やはり短命となる一因は藻浦だったと正直感じます。キャラクターに問題があったことはもちろん、藻浦編がかなり長く描かれていたのもストレスだったんですよね。

弟を救出したいと考えながら他の事件も解決して行くQや、身勝手だけれどすマホの扱いは上手い全一郎と比較して「少し愚かな一般人」を出すという発想自体は確かに分かります。けれど、藻浦は配慮のなさ以上に不快感が勝ってしまったんですよね。反省する様子もなく窃盗を繰り返すキャラに好感を持てる読者は多くないと思います。悪事について批判されていればむしろ共感出来るキャラになったのではとも思うのですが、Qが藻浦の行動にほとんど言及しないのも疑問でした。「藻浦はすマホに振り回された人間」という言葉で片付けて良いことではなかったはずです。あくまでも愚かな一般人という立ち位置ならギャンブル程度に留めるべきでしたし、犯罪に手を染めるなら警察だけではなく、主人公のQもしっかりそこを非難するべきだったと感じます。

更に言えば、内面だけではなく外見にも魅力を感じられませんでした。「今までのキャラとは別の視点を担当した上で、主人公のQに影響を与える」という重要な役割を持っているなら、性別を問わず惹き込まれる容姿にしたほうが良かったはずです。外見にも内面にも魅力が感じられず、退場のときも残念だとは思えなかったんですよね。


序盤から登場していた全一郎は突っ込みどころが多いもののインパクトは強く人物像も掴みやすかったのに、その後Qと関わることになったすマホの持ち主を藻浦のようなキャラにしたのは失敗だったと感じます。全一郎だけではなくボーケンや冷も魅力的だったので、余計に藻浦のおかしさが目立っていた気がするんですよね。藻浦編で離れた読者も多かったのではと思います。



3 推理部分の粗が多かった


サスペンス要素や謎解きのパートはこの作品のメインだったと思うのですが、ずさんに感じる部分が多かったというのが正直なところです。ここで引っかかるとQのすごさも伝わって来ないんですよね。

厳しいようですが、第一話の女児誘拐事件の推理にも個人的には納得出来ませんでした。細かいことかもしれませんが、犯人が一軒家に住んでいると決めつけていることに引っかかったんですよね。人気のないアパートなどが現場になっているケースも十分考えられたはずです。また、初めに被害女児の服装を観察していたのに、別の方向から推理を始めたことも気になりました。

その後、タワマン襲撃犯と修誘拐事件の犯人が同一人物なのではとQが考え始めますが、やはり引っかかったというのが正直なところです。最終盤で答えが描かれましたが、Qの推理が登場した段階だと判断材料が少なすぎたんですよね。人物像が被ること自体は分かりましたが、これで犯人だと断定するのは無理があるだろう、と感じてしまいました。

最終回で言及されたAIの正体も面白いとは思いましたが、Qが結論に辿り着くまでの経緯が唐突な印象を受けました。喋り方が似ているだけで一人称なども全く違いますし、読者としては気になってしまったんですよね。


Qは秀才という設定ですし、推理部分の説得力は大切だったと思います。サスペンス要素を含むジャンプのヒット作というとDEATH NOTEが有名ですが、読み返してみると矛盾も見つかるものの、特に序盤はかなり緻密に構成されておりとても惹き込まれるんですよね。特殊なアイテムがキーになる、という部分も共通していますが、ルールがしっかり決められていたのも大きいかったのではと感じます。すごいスマホもすマホの設定を固めた上で、Qの思考に説得力を持たせて欲しかったです。



現代が舞台の推理物だと、話の粗や矛盾が目立ってしまうんですよね。他の漫画以上に気を遣わなければいけないジャンルなのだと感じます。

絵は好きですし、全一郎、ボーケン、冷のように魅力的なキャラもいたんですよね。修誘拐についての詳細も気になっていたので、終了は残念でした。

設定をもっと煮詰めて、特にAIの正体について序盤から伏線を描写していれば結果は違っていたのではと思います。冨田先生、肥田野先生の次回作をまた読んでみたいです。




りは「序盤で矛盾が目立つと推理ものは難しそうですよねー。
今後同じジャンルに挑戦するなら、
特に初期の構成をしっかり考えて欲しいです」



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