2022年10月14日金曜日

短期連載(打ち切り)作品解説 アリスと太陽 2/2



3 活かせていない設定が多かった


思い出せるだけでもアリスの耳について、強敵とされていたバンドのカタナビーツ、人を操れるほどの歌声を持つMIKAなど、面白そうなのに描写不足のままだった設定が多かった気がするんですよね。短命で終わったので仕方ないとも思いますが、ほぼアリスと太陽のふたりだけで進行していた序盤が長かったことも一因だったのではと考えております。

終盤に登場したカタナビーツとMIKAは掘り下げる時間がなかったのかなと思いますが、主人公のアリスの耳については序盤から伏線などをもっと描いても良かったのではと感じます。最終回でいきなり耳について言及されたときは正直悪い意味で驚いてしまったんですよね。予想出来るのはアリスの「リミットがある」という台詞くらいで、かなり唐突に思えました。たとえば耳を気にしているシーンを頻繁に入れるだけでも感じ方はもっと違ったはずです。

暗殺教室や黒子のバスケが「短期間で終了しても問題のないように物語を作っていた」というのは結構有名な話だと思いますが、連載の際はこうした慎重さも大切になる気がします。特にアリスは主要キャラですし、エピソードの区切りごとに伏線を描く、といった構成にも出来たと思うんですよね。


設定やキャラが消化不良のまま終わってしまうという現象は短命の漫画には良く見られるのですが、最終回に出すような設定はしっかり描写して欲しかったというのが正直なところです。アリスの耳以外だとMIKAもこれにあたりますね。彼女はデザインや能力が個人的にとても好きだったので余計残念でした。

MIKAは序盤から伏線を張るのは難しかったかもしれませんが、ライブやレコーディングでの歌唱シーンを少しでも挟めば印象も変わった気がするんですよね。バンドを組んでMIKAとも対決する、という展開自体が決まっていたなら、猫実や瞳子も早くに登場させればMIKAの活躍を描けたのでは、と思います。エピソードの見せ方など、全体の構成を考えることが重要なのでしょうね。



振り返ってみると、やはり音楽を表現しきれていなかったのが一番問題だったのではと思います。アリスと太陽の音楽をしっかり描写出来ていれば、他の部分にはあまり引っかからずに読めた気がするんですよね。

特にバンドを組んでからの展開は面白かったですし、個別項目でも触れたMIKAやカタナビーツが掘り下げられればもっと惹き込まれる作品になっていたのではと思います。序盤でアリスと太陽の音楽がどんなものかはっきりと示して、早い段階で猫実や瞳子を加入させれば結果は違っていた気がするんですよね。人気を獲得すれば他の設定を描く時間も確保出来たはずです。

絵も好きですし特に女子のデザインは秀逸だと思うので、テーマをしっかり表現した漫画を読んでみたいです。凸ノ先生の次回作に期待しています。




りは「特に瞳子とMIKAが好きでした。
難しいかもしれませんが、
音楽漫画自体は好きなのでまた挑戦して欲しい気もします」




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