2022年9月29日木曜日

短期連載(打ち切り)作品解説 仄見える少年 2/2



2 ホラー漫画的な迫力が足りなかった


いわゆる退魔物なので敵となる霊や妖怪の不気味さが大切だったと思うのですが、そこまでの恐怖を感じられなかったというのが正直なところです。登場時などには強さやおどろおどろしさなどをしっかり描写したほうが、打ち勝てた際の安心や面白さに繋がったのではないかと考えております。強大な相手を上回ったほうが伊織達の魅力も増しますしね。

元々そこまで恐怖に重点を置いていない幽霊との交流ものなどなら良かったと思いますが、仄見えは伊織の設定や絵柄からしてもシリアス寄りなんですよね。だとすると霊や妖怪の迫力が足りないというのはやはり欠点だったと言わざるを得ません。

冒頭からずっと「うん」という呟きが聞こえていた逆柱のエピソードなど演出面でゾクッとするシーンは良かったのですが、絵で魅せることも大切だったはずです。画力は非常に高かったと感じますが、全体的に綺麗になりすぎてしまったことも迫力不足の一因かもしれませんね。


バトルシーンは表現を少し変えるなどの工夫をすれば、恐ろしさが増して読者の印象にも残りやすかった気がします。高い画力は長所だと思いますが、霊や妖怪を描くときは、いっそ絵を崩すくらいでちょうど良かったのかもしれませんね。


3 絵、話共に印象に残りにくかった


絵も分かりやすく話に大きな矛盾などもなくストレスの溜まらない漫画だったのですが、読み終わった後、心に残るページが少なかった気がします。展開や設定などを思い出すのに時間がかかり、翌週になると前回のエピソードを忘れてしまう、という事態がよく発生しました。これは何度か読み直してもあまり変わらなかったんですよね。

まず絵に関しては、上の項目でも触れたように恐ろしさが足りていなかったことが原因として挙げられると思います。敵の強さがしっかり表現されていれば、ストーリーが難しくてもそのシーンは記憶に残りますからね。

そして話に関しては、短いエピソードが続いていた上、伊織達の大きな目標が示されていなかったことが問題だったと考えております。全体的にぶつ切りのような印象を受けてしまう構成になっていて、話の繋がりも覚えにくかったんですよね。伊織達の最終的な目標などが描写されていればまた違ったと思いますがそれもなく、エピソードの途中でも「何のために霊怪を祓っているのか」と疑問に感じてしまいました。また、伊織の心情が分かりづらく、先が気になる展開も正直少なかった印象です。

ちなみに、途中で怪異の舞台が学校外に移ったのも個人的にはもったいないと感じました。第一話は惹き込まれる部分が多かったので、人気が定着するまではいわゆる「学校の七不思議」を解決するようなストーリーにしたほうが盛り上がった気がします。読者にとっても身近なテーマですしね。


画力の問題や話の矛盾はなくとも、インパクトに欠けるとなるとアンケートなどで結果を出すのは難しかっただろうなと感じます。絵の見せ方も変えたほうが良かったと思いますが、伊織の過去や目標が中盤までほぼ描かれていなかったことが、ストーリーに入り込みにくかった大きな理由ではないでしょうか。上の項目でも書きましたが、もっと序盤で伊織の内面を明らかにしておけば結果は違った気がします。



金未来杯のときから知っていた漫画ですし、特にキャラと絵に惹かれて応援していましたが、連載では印象に残りにくい作品のまま終了してしまったというのが正直なところです。ストーリーを分かりやすくするためにも、もっと早くに伊織を掘り下げて明確な目標を示したほうが良かったのではと思います。序盤で作品から離れた読者はなかなか戻って来ませんしね。

いわゆる退魔物はベタでも人気のジャンルですし「テンションの低い主人公だけれど姉にだけは弱い」など、斬新な設定も個人的には好きでした。伊織は表情などはあまり変わらないものの、実は人間味に溢れていて面白いんですよね。少年達に伊織の魅力が伝わるように描けば、他の問題点はクリア出来て長期連載も出来たのではと感じます。

キャラへの好感度や画力は高かったですし、構成を改善した漫画を見てみたいなと思います。後藤先生、松浦先生の新作に期待しております。




りは「伊織もりくも、見せ方次第でもっと魅力的なキャラになれたと思います。
特に連載作品だと、細かい部分の工夫も大切になりますよね」



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